Sudokoo MACH140ファンとは
台湾のSudokoo(スドクー)という、CPUクーラーや簡易水冷(AIO)、PCケースファンを手掛ける新興ブランドが販売しているDCファンです。
プレミアム志向なブランドということもあって、一般的なファンとはかなり異なった、尖った特徴を持つファンです。
- 30mm厚フレーム×高圧設計
フロント吸気やラジエーターの“押し出し”用途に最適。最大129 CFM / 5.91 mmAqと公称値も強力。 - 3相・10極・12スロット+FOC(フィールド指向制御)の閉ループ制御
一般的なファンと比べて低速域の粘り・回転の滑らかさ・速度安定性が一段上。音の質も上品。 - 作り込みの丁寧さ
0%回転停止に近いファンストップ(PWM 5%未満で0RPM)や6年保証、LCP+ガラス繊維ブレード、日本のポーライト株式会社製ハイブリッド流体軸受など。 - 厚さ・重量に注意
厚み30mm・重量278gで取り回しは要確認。PCケースやラジエーターまわりのパーツ干渉チェックは必須。
MACH140 製品概要
- サイズ:140 × 140 × 30mm
- 回転数:500–2200rpm(±10%)、PWM 5%未満で0rpm
- 風量 / 静圧:129 CFM / 5.91 mmAq
- 騒音:≤39.9 dB(A)
- ベアリング:ハイブリッド流体軸受(ポーライト株式会社カスタム品)
- 材質:LCP(液晶ポリマー)+ガラス繊維強化ブレード
- その他:モーターハブに透明ウィンドウ+白色LED(スイッチで消灯可)、6年保証
ファンの回転数から言うと、高速・大風量ファンに属するスペックですが、後述する3相・10極・12スロット+FOC閉ループ制御モーターの採用によって、低速ファンとしても十分に利用可能なスペックを有しています。
3相・10極・12スロット+FOC閉ループ制御モーター
このファンの最大の特徴でもあるのが、3相・10極・12スロット+FOC閉ループ制御モーターを採用している、という点です。
外見を見ると違いは一目瞭然。なんですか、この星形エンジンは・・・

一般的なDCファン(PCケースファン)は、コストや実装性の観点から簡易的な制御方式を採用することが多く、低速域のトルクリップル(回転ムラ)や共振が起きやすい傾向があります。ファンの回転数を落とした際に、回転が止まって左右に小刻みに揺れているような状態になっているのを見た方も多いかと思います。

一般的なDCファンのモータはこちら。4スロット(コイルが4つ付いている)設計の、ごく一般的なPC向けDCファンの構造です。
MACH140のモーターがどれだけ過剰スペックなのか、一目瞭然だと思います。
MACH140は、3相BLDCモーターをFOC(Field Oriented Control)で閉ループ制御しています。こう書くとなんのこっちゃ・・・という感じですが、以下のメリットがあります。
- 回転の滑らかさ
FOCはトルクリップルが少なく、低速~中速域で“コツコツ感”が出にくい。 - 速度安定性
閉ループ制御により、フィルターやラジエーターで背圧が変化しても目標RPMに復帰しやすい。デュアルファン運用時のビート(うなり)回避にも有利。 - 音質の向上
通電切替の高調波が減り、耳障りなトーンが出にくい。3相モーター自体もスイッチング周波数が高くなり、体感ノイズが整いやすい。 - 応答性
負荷変動に対し素早くトルクが変動し、ファンカーブの変化に素早く追従。
なお、10極・12スロットという過剰すぎでは?という極数・スロット数の組み合わせは、トルクの脈動を抑えやすい設計によるものと思われます。一般的には、極数・スロット数を増やすと低速トルクが増し、脈動も低下するようです。
油圧ベアリング採用
採用しているモーターもアレですが、ベアリングもまたなんていうか独特というかやり過ぎです。
日本ポリット社と記載されていますがそのような企業は存在しませんので、日本のポーライト株式会社のことかと思われます。

多孔質の金属体に潤滑油を含浸させ、自己給油の状態で使用する滑り軸受である焼結含油軸受という特殊な製品となります。
いろいろなファンを使ってきましたが、焼結含油軸受を使っているファンは初めて見ました。
モーター・軸受をあえて”魅せる”デザイン
LEDを内蔵し光るファンなのですが、一般的なLED搭載ファンのように、ファン全体が光るのではなく、透明パーツによって透けて見えるモーター部分をLEDがライトアップするという、これまた独特な作りになっています。

こんな感じで、モーターのスロットの間に12個の白色LEDが内蔵されており、シースルーなファンの中心部を通じてモーター部分を照らし出します。完全にモーター推しな作りですね。

LEDはファンの裏側にあるスイッチで、ON/OFFの切り替えが可能です。
その他も抜かりないスペック
ファンブレードはガラス繊維複合材を使用していますのでとても硬く、加工精度も良好です。
ファンのフレームとブレードとの隙間も極小で、ファンブレードの口径も大きく、風量・風圧ともに優れています。

LEDを周囲に配置したファンはLEDがある分どうしてもファンの口径は一回り小さくなってしまうので、性能を重視するのであればMACH140のようなファンがありがたいです。


ファンの側面には脱着可能なパーツが取り付けられています。
個人的には無い方が好みなので外してしまいました。
3Dプリンタ用のデータが配布されているようで、自作が可能とのことです。

ちょっと変わっているのが、ファンの電源ケーブルに、PWMのメスコネクタが付いているという点。これはラジエーターに複数搭載するような場合、長いケーブルを何本も接続せずに、すぐ隣のファンのコネクタにファンを繋げられるというメリットがあります。
高級ファンでは専用のコネクタを採用しているものが多いですが、PWMのメスコネクタを付けてしまえ、というファンは初めて見ました。ある意味合理的な構造のように思います。
ファンから出ているケーブルはデイジーチェーンを想定して短めとなっていますが、PWM対応の延長ケーブルが付属しますので、ケーブル全体の長さは一般的なファンと変わりありません。
3種類の付属ネジと取り付け方法

取り付け用のネジは3種類あり、一般的なファン用のネジ、ラジエーター取り付け用のネジ、そして変わっているのが、ファンを貫通して取り付けるネジとなります。
ファンを貫通して取り付けるネジですが、24~36mmまで対応可能で、上の写真の説明書に記載されているように、ファンの裏側から取り付け穴を通してケース側から固定します。
ファンにゴムの振動防止パッドが付いていたとしても、一般的なファン用のネジで固定した場合、ネジを通じてファンの振動がケースに伝わるため、あまり意味がありません。
しかし、このネジのように、ファンの裏側から長いネジを使ってファンを固定すると、ケースとファンが接している面はゴムの振動防止パッドのみとなりますので、ネジを通じてファンの振動が伝わりづらい、というメリットがあるように思われます。
このネジ、良いですね。
30mmという厚さのファンなので、水冷クーラーのラジエーター用のファンが付属するのもありがたいところです。
使用した感想と一般的なDCファンとの違い

- 低速の粘りと静けさ
600~800rpm前後の低速域での滑らかさが際立つように思います。トルクの谷が少ないため、PWMの微調整でも回転がコロコロ変わりにくく、安定した回転数です。
また、PWMで回転数を限界まで絞ったところ、6%の500rpm弱くらいまで回転することを確認しました。ファン自体は2,200rpmまで対応していますが、マザーボード側のファンコントローラーで、silent、あるいは手動による低速稼動で利用しても問題無く利用可能です。 - 押し出し用途に強い
公称5.91 mmAqの静圧と30mm厚フレームの相乗効果で、PCケースのメッシュ形状やダストフィルター越し、あるいは水冷クーラーのラジエーターなど、背圧が高い場面で効率が落ちにくいのが特徴です。 - 速度維持が良好で回転数が安定している
トルクフルなファンなので、ケース内温度や抵抗が変わってファンの回転数に変化が生じた場合に、目標RPMに戻す力が強く、また、高性能モーターによって回転数にもムラ無く安定しています。
こういう人にお勧め
徹底した、というか明らかにオーバースペックな感じの高級ファンですが、お値段も1つ5,000円と高いファンでもあります。
安いファンなら5つくらい買えてしまいますので、MACH140は以下のような方におすすめといえます。
- とにかくハイスペック、尖った製品が使いたい
- モーター部分のシースルー&ライティング演出が格好いい!
- 正面吸気でフィルターやメッシュが厚いケースを使っている
- ラジエーターの“押し込み”エアフローを強化したい
- 静音寄りのファン速度設定でもCPU温度の増減に応じてファンをきちんとコントロールしたい
私は単に製品の見た目で買ってみましたが、結果としては大満足でした。
2つ買って水冷クーラーに使うのも良さそうですが、いかんせん価格がネックですね・・・
気になった点
5,000円という価格は一般的な140mmファンより高めと言えます。ただし、6年保証や材質・軸受・制御の作り込みを考えると妥当ではありますが、やはりファンの価格としては高額でしょう。
30mmの厚みと278gという重さゆえ、他のパーツとの干渉や固定する場所の強度の事前確認は必須です。サイドパネルやフロントパネルとの距離、ラジエーターまわりのスペースの有無をチェックしておきましょう。
まとめ
MACH140はハードウェアの作りと制御に特徴がある高圧ファンと言えます。速度的には高速ファンに属するスペックですが、モーターおよび制御の作り込みが半端ないので、低域での運用ももちろん問題無くこなします。要するに、30mm厚で高圧だけど低速から高速まで自在にこなせるオールラウンダー、という性格のファンです。
30mm厚フレームとFOC閉ループ制御の3相モーターによって、低速域の滑らかさとエアーの押し出し性能は素晴らしく、静音寄りのセットアップで温度をきっちり抑えたい、あるいはラジエーターやメッシュ形状のケースなど高抵抗な環境で性能を引き出したい方には、とても良い選択肢だと感じました。
ちなみに、120mmファンもあります。
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