Beyerdynamic DT 1990 PROをRME ADI-2 DAC FSと組み合わせて使ってみた

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開放型モニターヘッドフォンとして評価の高い、BeyerdynamicのDT 1990 PRO。
とにかく解像度が高い、モニター的なキチッとしたサウンドに、テスラドライバーによる独特の高域表現…といった感じの、とても評価が高いヘッドフォンです。Made in Germanyらしさ炸裂、といった音作りでしょうか。
このヘッドフォンに、これまたMade in Germany炸裂なRMEのADI-2 DAC FSを組み合わせて使ってみることにしました。
ドイツ×ドイツな感じの組み合わせです。
…そういや、スピーカーもELACのBS310 Indies Blackなので、ドイツ率がすさまじく高いシステムになった気がします。

我が家のリファレンス、ATH-M9X

愛用しているヘッドフォンは、1990年発売のオーディオテクニカ ATH-M9Xだったりします。
30年以上前の製品になるわけですが、モニター然としたバランスの良さ、密閉型であるが故のパワーとヴォーカル域の美しさは今でも十分通用するヘッドフォンかと思います。
今時のハイレゾ的な音作りとは異なるサウンドですが、バランスが良いというか、とがったところがないのでモニターヘッドフォンでありながら、音楽のリスニングにも十分使える名機だと思います。

とはいえ、デメリットも無いわけではなく。
密閉型の宿命である、密閉されているが故の蒸れ、ヘッドバンド部分が細いために装着していると頭皮が凹む(!)、イヤーカップが若干小さめで耳が押さえつけられるので、長時間装着していると耳が痛くなる…といったところが気になる点でした。

テレワークになり、家で仕事をする機会が増えたため、必然的にPCオーディオ環境の出番も多くなり、それならばとADI-2 DAC FSやAP-505を導入したりといろいろ機材も変わってきた訳ですが、夜にスピーカーをガンガン鳴らす訳にもいかないので、遅い時間帯にはヘッドフォンの出番となります。
そうなると、先ほどのデメリットが気になってくる訳でして。

解決方法としては、装着していて気軽に使える開放型ヘッドフォンの導入がベストな訳ですが、昔使っていた開放型ヘッドフォンであるMDR-F1の残念な印象から、開放型ヘッドフォン自体にどうも信頼が無かったりします。
どうしても構造上、中~低域の不足感は致し方ないのかなぁ、と。

そんな中、いろいろ調べていたらBayerdynamicのDT 1990 PROの存在を知り、開放型のモニターヘッドフォンということに興味を持ったこともあり、えいやーと買ってしまったわけです。

Beyerdynamic DT 1990 PROを聴いてみる

さて、届いたDT 1990 PROですが、見た目もとてもかっこいいヘッドフォンです。
ハウジング外側の、スリットになっている部分のデザインが特徴的で、パンチング加工されたスリットホールの裏側にはスチールメッシュが組み込まれ、外気とオープンになっている構造です。

装着感も抜群で、幅が広いイヤーパッドとヘッドバンドが370gの重量を適度に分散してくれるので、装着していて重たいと感じることは一切ありません。
むしろ、330gのATH-M9Xの方が重量のほとんどを細めのヘッドバンドが負担しているため、装着していて遙かに重たく感じます。
長時間の利用では、圧倒的にDT 1990 PROの方が楽ですね。

独自のテスラドライバーを搭載したDT 1990 PROですが、どんな音がするのか、早速聴いてみました。
ソースはAmazon Musicのハイレゾ音源、DAC兼ヘッドフォンアンプはRME ADI-2 DAC FSとなります。

開放型なのに充実の中~低域再生能力

最初に聞いて感じたのは、最新の開放型ヘッドフォンすげえ!というものでした。
開放型のヘッドフォンでも、中域~低域にかけてこれだけリッチに厚みがあったサウンドが鳴るのですね。
MDR-F1と比べること自体失礼ですが、昔感じていた、開放型の限界という固定概念が見事に吹っ飛びました。こりゃすごいよ…

厚みはありますが、ブーミーな訳ではなく、開放型ということもあってもたれることなる小気味よく上品に鳴らしてくれるのが良いところです。
無理して低域を厚くしようと思って潰れまくってるヘッドフォンとは格が違います。

圧倒的な解像度でまさにハイレゾ。ただし、高域は独特の響きといった印象

テスラドライバーですが、各所のレビューを拝見すると一昔前のBeyerdynamicのモデルはかなり刺さる感じの金属的な高域特性のようでした。
どんな感じか心配していたのですが、高域については独特の特徴があり、機材によってはかなり刺さった感じに聞こえそうだなぁ、という印象です。
ATH-M9Xと比較すると、今まで聞こえていなかった高域のディティールがあふれ出す感じなので、最初はかなり違和感がありましたが、慣れると今までわからなかったものが明確に伝わるので、とても新鮮な体験でした。
ATH-M9XがDVDだとすると、DT 1990 PROは4k Bru-ray、といった感じでしょうか。

ただ、やはりサ行の刺さる高域の鋭さはあり、ソースによっては気になることも。
サクッと聴いた感じだと、坂本真綾の「30minutes night flight」「光あれ」、あるいは幾田りらの「スパークル」、millennium parade & Belleの「U」(竜とそばかすの姫)とかでその傾向が顕著な印象です。

ただし、これについてはADI-2 DAC FSのイコライザー機能がとても良い仕事をしてくれており、ハイ上がりの部分を押さえるようにしたところ、ある程度聞きやすくなりました。

ヘッドフォンの特性にあわせて、DAC側でコントロール可能なADI-2 DAC FSのイコライザーはとても便利です。
出力端子によってプリセットを変えられますので、アンプ経由でスピーカーで聴く時はフラットにし、ヘッドフォンの時にはプリセットしておいたイコライザーを適用することが可能です。
また、Bass/Treble、Loudnessコントロールで補正することもできます。
このあたり、多機能なADI-2 DAC FSのメリットといえるかと思います。

RME ADI-2 DAC FSと組み合わせてモニターサウンドを満喫する

モニターヘッドフォンのDT 1990 PROと、これまたモニター的なサウンドが特徴のDAC、RME ADI-2 DAC FSを組み合わせてみたわけですが、出てくるサウンドはとても色づけの少ない、極めて解像度の高いものでした。
ある意味、リスニング用とは対局にあるようなサウンドの印象も持ちますが、意外や意外、割とリスニングにも使えます。

良くも悪くもソースの善し悪しを忠実に描き出しますので、モニターとしての用途にはとても良好な組み合わせです。
では、作業時のリスニング用にはどうか…というと、イコライザーを使って気になる高域を少し弱め、クロスフィード機能を使って左右のチャンネルを少しミックスさせ、定位を前方に移動させるだけでキャラクターがガラッと変わります。
もちろん、音色が変わる訳ではないのですが、聴きやすさはこちらの方が遙かにバランスが良いです。
ADI-2 DAC FSのクロスフィード機能、割と使えると思います。

試しにシーネ・エイのThe Bitter Endを聞いてみたところ、出だしのドラムとベースの重低音の迫力が半端ない!そして細かいディティールを感じることができる解像度の高さ。
ヴォーカルは思ったよりも近い感じで、これは良い印象です。

高インピーダンスのヘッドフォンも楽々ドライブできるADI-2 DAC FSのヘッドフォンアンプ

一般的なヘッドフォンでは40Ω前後が多いインピーダンスですが、なんと、DT 1990 PROのインピーダンスは250Ω(!)だったりします。
これだけインピーダンスが高いと、ポータブルアンプやスマホ直挿しでの再生は厳しいこともありそうです。

さて、ADI-2 DAC FSですが、DAC部の多機能さ、高品質さはもちろんのこと、ヘッドフォンアンプにもかなりこだわって作られており、Extreme Powerヘッドフォン端子で十分ドライブ可能です。
Hi-Power機能をONにすると+15dB高い出力レベルになりますので、さらに高インピーダンスのヘッドフォン(BeyerdynamicのT1 2ndは600Ω…)などもドライブできると思います。
DT 1990 PROはHi-Power機能はOFFのままでも十分実用レベルでリスニング可能でした。

ちなみに、ADI-2 DAC FSにはIEMヘッドフォンに最適化されたIEM端子もあります。
PHONE端子とIEM端子でそれぞれ別々に設定可能なので、PHONE端子側で高インピーダンスヘッドフォン用にガッツリと鳴らすことも、IEM端子側に繊細なIEMヘッドフォンを繋いで楽しむこともできます。素晴らしい。

FEDELIX CAPRICEと組み合わせてみる

世代的には古いですが、音質が気に入っているFEDELIXのDAC、CAPRICE。
ナチュラルなサウンドは、真空管アンプと組み合わせるのにも最適だと思っています。
今はメインシステムのプリ兼DACとして使っている機材です。
このCAPRICEに、DT 1990 PROを繋げて聴いてみました。再生ソースはAmazon Musicで、Echo LinkからデジタルでCAPRICEに入力しています。

ADI-2 DAC FSとの比較になってしまいますが、うーん、ヘッドフォンのドライブ能力は圧倒的にADI-2 DAC FSの方が良いですね。
ヴォーカル域の分離というか生々しさ、高域から低域までの繊細さはADI-2 DAC FSにはかないませんでした。
ただ、ATH-M9Xではそこまでの差は感じませんでしたので、DT 1990 PROの解像度の高さと高インピーダンスが、FIDELIXのヘッドフォンアンプとはあまり相性が良くないのかもしれません。

といっても音質としては十分に良いと判断できるもので、ADI-2 DAC FSが突出しすぎている、といった感じです。

HIFIMAN ANANDA、SENNHEISER HD 6XXとの比較

DT 1990 PROの音の素晴らしさに衝撃を受け、今時のヘッドフォンってすげぇ!ということで、HIFIMAN ANANDAとSENNHEISER HD 6XX(HD 650と同等品)を買ってしまいました。

HIFIMAN ANANDAと比べると、情報の密度はDT 1990 PROの方が上です。ぎゅっと詰まった感じのモニターサウンドです。
ANANDAは今時のハイレゾなワイドレンジなのはDT 1990 PROですが、広がりが素晴らしく、ヴォーカルも少し離れたところに位置しますがそれがリスニング用としてはとても心地よいヘッドフォンです。
耳に音の情報が漏れなく伝わるのがDT 1990 PRO、適度にリスニングに適した距離感で、とても広い音の広がりを楽しめるのがANANDA、といった感じ。

DT 1990 PROは開放型ですが、ハウジングの外には中~高音域が多少漏れる程度です。それとは正反対なのがANANDAで、外側にも内側と同じくらいの音量で、高域から低域まで放出しています。
開放型とはいえ中~低域はハウジング内に閉じ込めることで密度を上げ、力強い低域の再生能力があるのがDT 1990 PRO、といった感じでしょうか。

SENNHEISER HD 6XXとの比較ですが、世代が異なることもあって、HD 6XXのレンジはDT 1990 PROと比べるとかなり窮屈に感じます。
特に高域の解像度がいまいちで、DT 1990 PROのような圧倒的な情報量もありません。

とはいえ、HD 6XXの最大のメリットはなんといっても「長時間聴いていても疲れない優しいサウンド」だと思います。
モニター的な音の情報を耳が大量に受け止めるのではなく、疲れない成分(?)で音楽を聴くことが出来る点が気に入ってます。
高域の伸びや解像度的にDT 1990 PROと比べると1~2ランク落ちるのは確かですが、それが音が悪いことに直結するのではなく、フラットで聴きやすいサウンドという点が光るヘッドフォンだと思います。
要するに、キャラクターが全然違うと言いますか、比べることが違うような、そんな感じです。
なんか、キャラクター的に、ATH-M9Xの音の良さの方向性を生かしつつ、開放型にして抜けが良くなった感じで、聴きやすいんですよね、HD 6XX。

リケーブルでさらに楽しむ

DT 1990 PROのコネクタは3ピンのミニXLRですので、リケーブルが可能です。
今回はヘッドフォン購入にあわせ、オヤイデのHPSC-X63 1.3mを購入しました。
DT 1990 PROに付属するケーブルは2種類あり、カールコードが約5m、ストレートケーブルが約3mとなります。
スタジオで使うならこれくらいの長さがあった方が良いのでしょうが、デスクトップで楽しむのであればここまで長い必要はありません。

オヤイデのHPSC-X63ですが、1.3mと2mがラインナップされています。
1.3mは手元に置いてあるDACと繋ぐのにちょうど良い長さで、取り回しがとても楽になります。
もちろん音質面のメリットもあると思いますが、なにより使い勝手が良くなるのはワイヤードヘッドフォンにとってとても重要ですので、リケーブルをおすすめします。

HPSC-X63ですが、標準のケーブルと聴き比べ…といいたいところですが、実は一度も標準のケーブルを使うこと無く、HPSC-X63を使ってしまっていたりします。

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