オープンエアヘッドフォンの定番中の定番、AKG K812を他製品と比べてみる

オーディオ関連

Bayerdynamic DT 1990 PROから始まったヘッドフォンコレクションですが、いろいろ見たり調べたりする中で、気になっているヘッドフォンが2つありました。

1つは、SENNHEISERのフラッグシップ、密閉型のHD 820。HD 800Sは定番中の定番ともいえ、リファレンスとしても有名な1台ですが、密閉型のHD 820はHD 800Sと比べるといまいち人気が無い…というか、登場したのが最近ということもあって、同価格帯での競合も相当の強者揃いのため、強烈な個性がない優等生なだけに苦戦?しているのかもしれません。
しかし、密閉型ということもあり、一度は使ってみたいと思うヘッドフォンです。(本当は密閉型好き)

そしてもう1つが、AKGのフラッグシップ、AKG K812。
こちらもリリースからかなり息の長い製品となりますが、音場の広さ、というか広大さはとても人気があるヘッドフォンで、HIFIMAN ANANDAで驚愕した自分としても、やはり使ってみたいと感じるヘッドフォンの最有力候補でした。

今回、そこそこ手頃なお値段で入手することができましたので、簡単にレビューしてみたいと思います。

期待通りの音場の広大さ。確かにこれをヘッドフォンで実現するのは凄い

最初に聴いてスゲえ!と思ったのは、やはり音場の広さ。
広いというか広大で、スピーカーで音楽を聴く方が好きな自分としても、おおお・・・!と驚き。
耳元に圧倒的な情報量を届けてくれるDT 1990 PROとはかなり対極的。
確かに、これは唯一無二といってもいいかもです。(数機種しか持ってないので偉そうなことはいえませんが…)

その反面、ヴォーカルの近さについてはHIFIMAN ANANDAの方が上かな、という感じです。
ANANDAは音色的にフラットなのですが、味付けもあっさりしていて、ウォーミーに被ってくる中域の厚さ、とはまったく皆無なサウンドです。
それに対し、AKG K812は中域の厚みもあり、ここらへんはなんとなくHD 650を彷彿とさせる感じ。
ANANDAは近いけどあっさりな感じで歌い上げ、AKG K812はしっとりとした艶がうっすら乗る、そんな印象です。
曲として聴いていて楽しいのはAKG K812ですね。ANANDAはK812と比べるとあっさり目。
DT 1990 PROと比べると…こちらはモニター然とした堅いサウンドなので、だいぶキャラクターが異なります。

いろいろなジャンルの曲をAKG K812で聴いていますが、ジャズのサックスとか気持ちいいですね、このヘッドフォン。
フラット系ではあるのですが、中域に厚みというかリッチな印象があり、これがジャズとの親和性がとても気持ちいいです。ANANDAだとちょっとあっさりしすぎ、という印象がありますが、AKG K812だと芳醇な雰囲気になります。

高域の伸びはANANDAにひけを取らず、低域は思ったよりも厚め。
でも、ブーミーにならず、破綻しないのはマナーが良い感じです。
ベースが震える空気感とか、低域もそれなりに厚いので、バランスが取れていて聴いていて気持ちが良いヘッドフォンです。
開放型だとどうしても低域は手薄になってしまうので、密閉型のAKG K872だとかなり違ってくるのかもしれません。

ハウジングのメッシュから、うっすら覗くブルーのユニット部。
かっこいいですね。

ハウジングの外周の縁がアルミ製のパーツなのですが、机の上に置いたりするときに傷になりやすい気がします。
購入したものは中古のため使用による傷がありますが、これは使っていれば不可避なので、気にせずガンガン使えるということで良しとします。

重量を感じさせない、空気のような装着感

AKG K812:399g
HIFIMAN ANANDA:440g
Beyerdynamic DT 1990 PRO:370g
SENNHEISER HD 6XX:260g

といった重量なのですが、装着感は圧倒的に軽く、HD 6XXの260gに次ぐくらいの印象です。
むしろ、DT 1990 PROがかなり重たく感じます。
ANANDAはそれなりに軽めなのですが、AKG K812と比べると側圧が高いので、重量感は少しあります。

AKG K812の装着感の良さは、独自形状のイヤーパッドによる部分もかなり大きそうです。
このイヤーパッド、中にスポンジなどが入っていないため、とてもソフトです。
側圧もかなり控えめで、かろうじてヘッドフォンがズレない程度の力しかかかりません。
ハウジングの直径はそれほど大きくないものの、イヤーパッドが特殊な形状なので中身の空洞エリアが広く、これも音場の広さに一役買っているのかもしれません。

ハウジングはこのようにメッシュとパンチメタルの二重構造となっており、抜けがかなり良さそうな印象です。
実際、音を鳴らすとかなり外部に漏れ出ますので、公共交通機関とかでの使用は避けた方が良いです。

側圧はダントツでAKG K812が軽く、重量感も体感ではHD 6XXに次ぐくらいの重量しか感じません。
装着感の良さという点では、AKG K812が最強です。
装着感の良さですが、多くのヘッドフォンは横軸方向にしかヒンジがなく、ユニットが上下にしか振れませんが、AKG K812は横軸と縦軸の2軸にヒンジがあるので、上下左右に振れるというメリットがあります。
このため、軽い側圧でも耳にぴったりフィットしますので、装着感が軽く感じるように思います。

K812、ANANDA、DT 1990 PRO、HD 6XX。どれがオススメか

価格帯も方向性も全てバラバラなヘッドフォンですが、今所有しているモデルに勝手に用途を割り振ると、

  • まるでスピーカーで聴いているような音場の広さと、厚みのあるサウンド→AKG K812
  • フラットかつ解像度が高くて繊細。オールマイティーに使える優等生→HIFIMAN ANANDA
  • 録音の良さも悪さもありのままに描く、高域の質感が独特なモニター→DT 1990 PRO
  • ながら作業をするときにとても聴きやすい、高コスパモデル→HD 6XX

といった感じでしょうか。

価格についてですが、中古を探すのであれば、AKG K812が一つ図抜けて高く、8万円前後です。
購入する際は、ハウジング周囲の傷、イヤーパッドのやれ、表面の劣化などを確認すると良いかと思います。
付属するケーブルですが、できればリケーブル前提とかでも良いかと思います。
悪くは無いのですが、解像度の高いヘッドフォンということもあり、ケーブルを変えるとかなり印象が変わります。
単結晶銅&純銀の8芯ハイブリッドケーブルに交換していますが、これだけでもディティールが少し明確になり、中域もスッキリした印象になります。

ANANDAとDT 1990 PROはぐぐっとお安く、4万円台で程度の良いものを購入出来ると思います。
ANANDAは標準のケーブルの品質がかなり良いのでそのままでも良いですが、DT 1990 PROは高解像度のケーブルに変えるとかなり化けますので、ケーブルに1万円弱くらい予算を割くといいかもです。
HD 6XXは通常$240ですが、時々$198のセールを行うので、そのときが狙い目。
ちょうど今$198で売っているようです。
ケーブルを変えると印象も変わりますが、DT 1990 PROほどの差は出ませんので、お好みで。

しかし、AKG K812、フラッグシップモデルだけあって箱も馬鹿でかいですね…。
ほかのモデルの倍弱くらいはあるんじゃないでしょうか。

ページの一番上に写っている、木製のヘッドフォンハンガーも付属するのですが、このハンガー、結構いろいろなサイトの記事で見かけます。
ほかのヘッドフォンのレビューでも、このハンガーに装着して写真を撮っている方も多く、ヘッドフォンのレビューを書いているようなディープな方の、AKG K812 / K872の所有率って結構高そうな気がしています。

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