D級アンプとは思えない存在感、デジタルなのにアナログっぽいTEAC AP-505のレビュー

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我が家のアンプは、昔はトランジスタでしたが、真空管アンプの表現の豊かさ、出力管を変えるだけで様々な表情を見せる魅力に魅せられてからは、全て真空管アンプとなっています。
真空管アンプにもメリット・デメリットはあり、最大のデメリットは2つで、真空管は消耗品であること(一般的に5,000時間、1日4時間使うと3.4年。といっても球によりけり)、あとは消費電力が大きく暖房機器である、ということでしょうか。

真空管の消耗については、今でもメジャーな真空管は生産が続いていますので入手しやすいので、普段使いはこのような球を使うことで対応可能です。
ただし、1930~60年くらいの魅力的な球については在庫限りになりますので、買えるうちに買っておくのが良いかと思います。

もう一つのデメリットの発熱ですが、211などの大型管だと500W程度は軽く超えてきますし、しかも真空管自体がものすごい熱を発するので、夏場に真空管アンプを使うのは正直気が引ける感じです。
私の場合、仕事をしながら音楽を聴くのに真空管アンプを使っているので、隣で大量の熱を発するアンプがあると、夏場はなかなかしんどいのであります・・・。

前置きが長くなりましたが、「夏場でも使いやすいデジタルアンプを買おう」ということでアンプ探しを始めたのですが、ちょっと高いものの、用途にぴったりだったのがTEACのAP-505でした。

アンプ選定のポイント

アンプを探すにあたり重視したのは、以下の点となります。
※重要度順

  • ELAC BS310 Indies Blackをドライブできる出力
  • デジタルアンプでコンパクト(幅30cm以内、高さ10cm以内)
  • 音質が良さそうなこと
  • できればパワーアンプ(プリ機能不要)
  • 真空管アンプを使わない夏場のみの利用なので比較的安価

上記の内容で選定した機種は以下となりました。
TOPPINGとかの中華製D級アンプもいろいろありますが、以前使った印象ではBS310を鳴らすには物足りなかったので対象外としました。
コスパ良くて良い製品多いんですけどね。

結局、AP-505を購入した訳ですが、購入の際に比較したモデルについてもご紹介したいと思います。

SONY UDA-1

すでに製造終了になっていますが、コンパクトなサイズでSONYらしい作りのアンプで、興味があった1台です。
23W+23WのAB級と出力もほどほどにあり、PCM1795を搭載しているのでUSBで直接PCと接続可能なのも良いところ。
そこそこ有力な候補だったのですが、プリ機能とDACは不要だったので、購入は見送りました。

Nmode X-PW1 MKII

1bitアンプで有名なNmode。一度使ってみたいと思うブランドでもあります。
X-MW1 MKIIはW210xH67mmという小型の筐体に1bitパワーアンプを詰め込んだ意欲作で、ボリュームも付いているので便利そうです。
ただ、Nmodeの音の作りってハイスピードというか、真空管アンプとは対極なところに位置している印象があり、ELAC BS310とは相性が良さそうとは思うものの、好みであるかはまた別問題。
できれば音の傾向は揃えたいので、見送りました。
あと、デザインもあまり好みでないというか・・・。

TEAC AX501 / AX-505

メインで使っている2台のDACのうちの1台、Olasonic D1を購入する際に迷ったのが、TEACのUD-301で、それ以来TEACのReferenceシリーズは気になっていました。
AX-501とAX505は小型のプリメインアンプ、しかもNcore搭載のD級アンプと言うことでかなり良さそうな印象でした。
しかも、AX-501は中古市場でもかなり入手しやすい価格になっているので、C/Pもかなり良くお買い得と言えるかと思います。
ボリュームノブとか、アナログメーターとか、こだわりのある作りも良い印象でした。
とはいえ、繋ぐDACがプリ機能もあるOlasonic D1なので、プリ機能は不要ということで対象外としました。

TEAC AP-505を選んだポイント

AP-505はTEACのReferenceシリーズのパワーアンプです。
Ncore搭載で130+130W(!)の出力を誇るD級アンプで、サイズも比較的小さくて設置も楽そう。
将来的にBi-AMPやBTLモードなど拡張できるのも楽しそうです。

一番気に入ったのは、パワーアンプなのでスイッチが電源スイッチのみ(厳密には、アナログメーターのゲイン・照度調整ボタンもある)というシンプルさと、ザ・パワーアンプという外見。
アナログ式のレベルメーターって、いいですよね。
無理矢理レベルメーターを入れたようなデザインのアンプもありますが、AP-505のアナログメーターはLRの両チャンネルが1つの窓に収まっており、デザインも良いです。
(LR独立のレベルメーターを押し込むとどうしてもダサい)

この中では一番高価ではありましたが、安い中途半端なモノを買うよりは、と思ってAP-505をチョイスしてみました。

ELAC BS310 Indies Blackと組み合わせて鳴らしてみる

早速、ELAC BS310 IBに繋いで鳴らしてみました。
ソースはAmazon Music HD、DAC/プリはOlasonic D1となります。
比較対象の真空管アンプは、Cayin A-300Bとなります。

一発鳴らしてすげぇ、と思ったのは解像度の高さ。
真空管アンプ、もちろん繊細さもありますし、なんといっても音の表情というか表現には秀でているのですが、デジタルアンプの解像度の高さにはかなわないところもあります。
その点、AP-505は隅々までキチッと鳴るというか、キレが良いです。

真空管アンプが白熱灯とすると、真空管アンプはLEDといった感じで、ON/OFFが高速でとても明るいのですが、白熱灯のような味わい深さはやはり劣る印象です。
・・・なのですが、AP-505、いわゆるD級のドライさとは違った印象を受けます。

PHILE Webのレビューから引用ですが

その印象をさらに加えると、直熱真空管 300Bを思い浮かべるほど倍音が色濃く、透明度も高い。本機では少し暖色系の音色も感じさせる。女性ヴォーカルではウェットで艶のある質感を備え、歌唱のリアリティーも十分満足できる。

https://www.phileweb.com/review/article/201906/10/3426_2.html

とレビューされているように、確かに色づけがアナログっぽいというか、中域が豊かな色づけがされているような印象です。
Cayin A-300Bがまさに直熱真空管300Bなのですが、もちろんこちらのほうがウェットで艶はありますが、傾向としては確かに同じベクトルなような。
色づけは真空管アンプ的な面もあるけど、デジタルの解像度の高さを生かした絶妙なところに落とし込んだようなサウンドです。

表現力の豊かさというか、味付けとしてはやはり真空管アンプが有利な印象ですが、真空管アンプは使うアンプや球の組み合わせによって色づけされるのに比べ、AP-505はリファレンス的な音なので、ブレがありません。
どちらが良いということではなく、完全に好みなのでどちらも好きなのですが、使い方を選べるという点ではオーディオの楽しみが増えるアンプです。

発熱が少ない以外にも真空管アンプと比べて、真空管と違い部品の劣化がほぼ無いので付けっぱなしが気楽にできることと、電源ONから使用可能になるまでの時間が短いこともメリットです。
といっても、これはかなりニッチなメリットですが・・・。

オーディオに全振りしているPC環境。
一番上のEL12 PPアンプは夏の間はお休みで、ラック下段のAP-505がメインとなります。
EL12 PPアンプは貴重な1940~50年代のEL12を4本使うので、ここぞ、という時用です。
その下のCayin A-300Bは気楽に使える球で揃えているので、常用しているアンプです。

評価

D級とは思えない表現豊かな音質で、しかも高効率と低発熱なのはD級アンプの特徴もしっかり併せ持つモデルと言えるかと思います。
音質は他のモデルを聞き比べていないのでなんともですが、昔持っていたA級アンプなどと比べても、このアンプの表現力の豊かさ、立ち上がりの早さは引けを取らないと思います。
将来的に2台でのBi-AMPやBTL構成など拡張性が高いので、将来もう1台追加して楽しむこともできそう。

10万を超えるアンプなので気軽にはおすすめできませんが、価格以上の価値はあると思う1台です。

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