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Burr-Brown×真空管。デジタル全盛時代にiFi Pro iDSD Signatureが示すアナログ哲学

5.0
オーディオ関連

長年、PCオーディオ用としてRMEのADI-2 DAC FSをリファレンスDAC/プリアンプとして使用してきましたが、今回、iFi Pro iDSD Signatureに交換してみました。

RME ADI-2 DAC FSはスタジオ由来の超精密なDA変換と5バンドパラメトリックEQ、クロスフィード等の豊富なDSP機能を武器とする、脚色のない、精度が極めて高いサウンドを特徴とする優等生的なDACです。RMEのSteadyClock FSテクノロジーによる極低ジッター設計や、ESS ES9028Q2Mチップを独自回路でチューニングした超低ノイズフロアが特徴で、まさにデジタル最先端、といったスペックを誇ります。

一方でiFi Pro iDSD Signatureは同社のフラッグシップDACで、プリアンプとても利用可能なのはもちろんのこと、ストリーマー、ヘッドホンアンプとしても使える、一体型万能機です。キャラクターが両極端に異なる2台ですが、乗り換えてみた印象を簡単にレビューしてみたいと思います。

iFi Pro iDSD Signatureに乗り換えたきっかけ

スピーカーをELAC 310 Indies BlackからBS312に交換してみたところ、思ったよりもJET 5ツイーターのキャラクターの違いに驚き、ELACもずいぶんとナチュラルになったものだ…と思ったことがきっかけとなります。
今まではJET III搭載の310 IBとADI-2 DAC Fsという、スピード・解像度重視のサウンドだったのですが、BS312で案外ナチュラルな方向に変化しました。

今までは、デジタルさを“弱めたい”ときは、アンプを300B真空管搭載のCayin A-300Bに切り替えて使用していましたが、冬場はいいのですが夏に真空管アンプはちょっと避けたいのと、作業しながら音楽を流すのであれば、TEACのAP-505の方が遙かに手軽なのです。

そこで、TEAC AP-505とELAC BS312という組み合わせは残しつつ、DACをあえてアナログ感の強いものに変更したらどうか…ということで選んだのが、iFi Pro iDSD Signatureになります。

iFi Pro iDSD Signatureの基本スペック・特徴

DAC部

最大の特徴は、ESSなどのハイエンドDACがハイエンドDAC市場を席巻する中で、あえてバーブラウン(Burr-Brown)という枯れたDACを採用している点。といっても、ビットパーフェクトDSD & DXD DACをクアッド・スタック(4基)でインターリーブ構成し、チャンネルごとに4組・計8組の差動信号でミックスするという、超贅沢な仕様となっています。

DAC以外のデジタル処理部分もかなり強力で、XMOS XU216 X-Core 200シリーズの16コアプロセッサーを採用し、MP3からPCM 32bit/768kHz、DSD512、MQAフルデコードまで対応するほか、iFi独自のCrysopeia FPGAデジタルエンジンにより、PCMやDSDをDSD512〜DSD1024までアップコンバートすることで、スタジオグレードのDSDリマスタリングが可能です。

ノイズ対策も徹底しており、すべての入力にガルバニック・アイソレーションを施し、USB入力には独立した電源管理システムと複数のレギュレーター・フィルターを装備することで、PCからのノイズを遮断しています。PCはノイズの塊ですので、有線接続時のノイズ対策はかなり効いてくると思います。

ジッター排除も徹底しており、Global Master Timing(GMT)クロックにより、メモリーバッファ経由でDA変換を行う仕組みです。

アンプ部

真空管を採用した他社製品のように真空管とソリッドステートで同じ回路を共有するのではなく、NOS GE5670真空管用とJ-FETソリッドステート用にそれぞれ独立した入力回路を設計。J-FET利用時は真空管側の回路が“無駄”になってしまうのですが、あえて別回路とすることでそれぞれの特色を最大限生かした設計としています。

アンプのオーディオ回路は、真空管・ソリッドステートいずれもフル・ディスクリート&フル・バランス構成です。ヘッドフォン出力ももちろんバランスに対応しており、フルバランス4.4mmのほか、6.3mm・3.5mmシングルエンドの3系統となります。

電源

iFiのフラッグシップ電源である、iPower Eliteが付属します。
再設計された内蔵電源部と合わせてノイズを300分の1に低減するとのことで、ハイエンドDACと組み合わせるにふさわしい電源です。ちなみに、単体購入すると5万円弱ほどします。

ストリーマー機能

TIDAL、Spotify、Napsterなどのワイヤレスストリーミング、AirPlay、有線LAN経由のDLNA再生、USBストレージ・SDHCカードからの再生に対応していますが、機能としてはオマケに近い位置づけのようです。
私はPCオーディオ専用としての使用ですので、ストリーマー機能については使用していません。

インプレッション

iFi Pro iDSD Signatureの音質については様々なサイトで素晴らしいレビューがあるので、ここではRME ADI-2 DAC FSとの比較を中心に、簡単にご紹介したいと思います。

全体的な音の印象

RME ADI-2 DAC FSの正確で分析的・フラットなモニター的な音作りに対して、iFi Pro iDSD Signatureは有機的かつリアルな臨場感を前面に出すタイプで、実際に聴いてみてもまったくキャラクターが異なります。
楽器の実在感・空気感の表現がRMEより強く、臨場感も増したことで、音楽の中により引き込まれる感覚が増した印象を受けます。

特に、Tube、Tube+モードに切り替えるとその傾向は顕著で、バーブラウンのDACの音質傾向とも相まって、なんともアナログ感のある、表情のある音です。まさに、音楽を「楽しむ」方向のDACと言えます。いやー、これは楽しい。

4.4mmバランス接続・チャンネルセパレーション

4.4mmのバランス接続端子があるので、MoonDrop Cosmoをはじめてバランス接続で聴いてみました。

実はいままでヘッドフォンのバランス出力端子を持つ機材は皆無で、なんちゃってバランス仕様のTA-10Rではバランス端子にした恩恵が無かったのであります。

試聴したところ、チャンネルセパレーションが劇的に向上したこともあって、別物では?!と思うくらい情報量が増え、ワイド感が増しました。左右の音像分離がはっきりし、音楽のリアリティが格段に向上しています。シングルエンド接続との差は圧倒的でした。
バランス出力で11.2Vを供給し、幅広いヘッドホンを余裕をもってドライブできるので、鳴らしにくいMoonDrop Cosmoでも余裕です。
ヘッドホンのゲインも0、+9dB、+18dBで調整できますので、アナログボリュームの一番「おいしい」ところでドライブさせることも可能です。

ホワイトノイズが気になる(低減可能)

RME ADI-2 DAC FSではわずかに聞こえたレベルのホワイトノイズが、iFi Pro iDSD Signatureではそこそこ目立ちます。
一番ホワイトノイズが目立つのは、DSD1024フィルターをONにしてTube+モードにした状態で、かなり目立つサーっというホワイトノイズが出ます。
DSDをOFFにするとホワイトノイズはかなり収まり、この状態であればTube+にしても他のモードと大差ないくらいのホワイトノイズ量に落ち着きます。

ただ、ホワイトノイズの量については、環境や組み合わせている機材によってかなり変わってくると思います。

Spotifyを最高音質で楽しむ

我が家の場合ソースはほぼSpotifyだったりします。
Spotify、2025年9月よりロスレス配信が始まりましたので、より高音質で音楽を楽しむことができるようになりました。
さらに、まだベータ版ではありますが、出力デバイスを固定して専用モードにすることで、ビットパーフェクト再生が可能になります。iFi Pro iDSD Signatureのフィルターでビットパーフェクトを選べば、SpotifyのサーバーからDACまで全ての経路がビットパーフェクトで統一されます。

ストリーミング音質の設定は設定画面から変更可能です。ストリーミングの音質で「ロスレス」を選択してください。
ロスレスの場合、24bit/44.1KHzのFLACでのストリーミング配信となります。データ容量は1時間あたり1GBまでの制限がありますが、音楽流しっぱなしでも0.7GB/時間くらいで収まっているので、問題無いかと思います。

音質の自動調整機能をOFFにして、ボリューム固定にすることも忘れずに。これをONにしておくと、Spotifyアプリ側が音楽データに変更を加えるため、音質が低下するとのレビューもあります。

出力設定で、「このデバイスの専用モードを有効にする」「このデバイスの音量を強制する」の両方をONにすることにより、SpotifyがWindowsのカーネルミキサーをバイパスしてオーディオデバイスに直接アクセスし、音楽データをPro iDSD Signatureに直接送出するビットパーフェクト再生が実現します。

USB接続またはSpotify Connectを利用する

ロスレス再生を楽しむにはBluetoothではなくUSB接続またはSpotify Connectの利用が推奨となります。
Bluetoothは帯域幅の制約でデータが再圧縮されるため、ロスレスの恩恵が得られません。

まとめ

ざっとですが、iFi Pro iDSD Signatureに交換した印象です。

  • RME ADI-2 DAC FSとはまったく異なるキャラクターを持ち、音楽のリアルな臨場感と感情的な没入感を徹底的に追求したフラッグシップ機で、音楽そのものが楽しくなる
  • Solid State/Tubeのモード切替やDSDアップサンプリング、様々なフィルターなど、自分のシステムと好みに一致するまで設定を追い込む楽しみがある
  • Tube/Tube+/Solid Stateの3モード切り替えにより、スピーカー・ヘッドホン・アンプの組み合わせや気分に応じた音作りが自由自在
  • Spotifyロスレス+専用モード設定の組み合わせにより、ストリーミング再生でも高品位なDA変換能力を最大限に活かせる

最大のネックは…定価550,000円と高額な点ですね。
良いDACだけど、いかんせん高いのですよ。人気があるから中古も高値圏を維持していますし。
でも、ハイエンドクラスのDACで、アナログ感を求めている人にはドンピシャなDACであることは確かだと思います。

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