パッケージにイラストを採用、独自の世界観でヘッドフォンなどの製品群を展開している水月雨 MoonDrop。1995年創業の中国・深圳市にあるメーカーとなります。
同社製のヘッドフォンのフラッグシップモデルであるCosmoを買ってみたので、簡単にレビューしてみたいと思います。
MoonDrop Cosmoについて
女性ヴォーカルに特化した製品も多いようで、パッケージやデザインに音作りの方向性が出ているように思います。
今回購入したヘッドフォン 大都会(Cosmo、以下Cosmo)もパッケージには女性のイラストがあしらわれ、他社のヘッドフォンとは異なる世界観で、MoonDropらしさが光るデザインとなっています。
独自の世界観と女性ヴォーカルに最適、ということもあって、気になっていたCosmoを購入してみました。
国内ではAmazonで販売されていたようですが、今では見かけないので中古品の購入となってしまうかと思います。
私はたまたまセールで安くなっていたAliExpressで購入しました。7,500円OFFのクーポン券が使えましたので、新品送料込みで125,000円でした。
このCosmo、最大の特徴は厚さ500nmという超薄型低張力振動膜基材を使用し、直径100mmという大口径のダイヤフラムを採用しているという点でしょうか。
私が所有している平面型ドライバー採用のヘッドフォンとしては、HifiManのANANDAに続く2台目となります。
MoonDrop Cosmoの音質について
ADI-2 DAC FSに接続しての試聴レビューとなります。
絶賛エージング中ではありますが、初見…というか初聴?の印象としては、とがったところはなくとても聴きやすいヘッドフォン、という点。
ワイド感、空間の広がりはAKG K812には負けますが価格差を考えるととても健闘していると思います。AKG K812よりも中域寄りにバランスがあるのか、鳴り方はかなり異なります。
Cosmoを聴いたあとでK812を聴くとかなりドライに感じます。
HIFIMANのANANDAとは音の傾向は似ているものの、音場というかヴォーカルの距離感がかなり違います。ANANDAはとにかく広くて立体感が強烈なのですが、ヴォーカルとの距離がちょっと遠いと感じることも。
その点、Cosmoは音の広がりはANANDAに譲るものの、すぐそばでヴォーカルが定位しますので、目を閉じるとすぐ目の前にいるような雰囲気です。
ANANDAの派手さも良いのですが、こういった、距離感の近い鳴り方っていうのも良い物です。
そして最大の売り?でもある、女性ヴォーカルについて。聴いて一発で気に入りました。
厚みがあるけども脚色されてない、とても聴きやすい感じ。
サ行が刺さるような印象もなく、全体がとてもバランス良く纏まっているので聴いていて楽しいヘッドフォンです。
前述のように、ヴォーカルとの距離感が近いヘッドフォンなので、聴きやすさが良いです。
これ、手嶌葵とか新居昭乃の曲とか最強なんじゃ…?!
例えば、ヨルシカの「晴る」ですが、録音があまり良くないこともあるのか、ヘッドフォンによってはさびの部分のドラムが暴走しヴォーカルがぐっちゃぐちゃになることが多いのですが、Cosmoの場合はきちんと中央で鳴ってくれます。
また、高域が尖ってない聴きやすいサウンドなので、ハイハットの音はきちんとヴォーカルの裏に収まっていて、暴れることもありません。
いかにもハイレゾ!という高域がとてもワイドなヘッドフォンと比べるとかなり中域にフォーカスした印象です。派手さはなく、とにかくヴォーカルを手の届く距離感でしっかりと描ききるディティールは、Cosmoは真空管アンプとのマッチングにあわせた設計になっているということも関係しているのかもしれません。
個人的には真空管アンプの奏でるウォーマーなサウンドが好みなので、Cosmoが鳴らす音はとても心地よいのですが、高域までしっかり伸びるヘッドフォンと比べると物足りなさを感じる方もいそうな感じ。
実際、K812を聴いた後にCosmoを聴くと、高域の解像度についてはかなりの差を感じます。
低域に関してはパンチ力は無いものの十分かな、という感じ。
開放型のヘッドフォンは低域が弱めのものも多いのですが、最近ではかなり改善されていて、これ開放型??と思うような音を鳴らしてくれます。
ただ、低域に関してはイヤーパッドを変えると化けるというレビューもあるので、何種類か形・素材が異なるものを手配してみました。
最後の方に追記しましたので、ご参考にどうぞ。
4.4mmバランス端子採用、質の良さそうな付属ケーブル
付属するケーブルの品質も良さそうで、かなり太めのケーブルの8本編みなのでCosmoとの相性が良いのかもしれません。(標準付属品だけにそりゃそうか…)
接続端子はハイエンドモデルらしく4.4mm5極バランス仕様となっています。6.3mmステレオプラグへの変換プラグも付属します。
リケーブル可能な構造になっており、ヘッドフォン側の端子は3.5mmステレオミニプラグですので、HifiManと互換性があります。
試しに、ANANDAで使っていた純銀ケーブルに交換してみたところ、低域のパワフルさは少し減りましたが、ヴォーカルの息づかいまで感じる繊細さが増しました。
リケーブルでかなり印象が変わりそうなヘッドフォンです。沼ですけどね…。薄膜素材で反応が良い?のがリケーブルによる影響を受けやすいのかもしれません。
手持ちのケーブルで試してみたところ、相性が良かったのは純銀4本編みのケーブルでした。このケーブル、軽くて取り回しが良い点も超重量級のCosmoとの相性が良い感じです。
…と思ったのですが、手持ちのケーブルだとAnandaの標準ケーブルが割と良い感じです。
太めのケーブルで腰太サウンドを狙うのも良いですが、個人的には銀線などの繊細さが出るケーブルと組み合わせるのが良さそうに思いました。ケーブルも軽いので疲れませんし。
nobunaga labsの蓼科とかも良さそうですね。
開放型なので音漏れは盛大
音の漏れは開放型ですので当然ですが、中にも外にも同じくらいの音を放出している感じがしますので、盛大に漏れまくります。
ですので、屋外での使用は控えた方が良いと思います…。
重量はなんと680g…超重量級だけど装着感は良好
デザインは少し無骨な印象を受けますが奇をてらったところもなく、好感が持てるデザインです。
ハウジングも金属製でしっかりとしています。このあたり、PARAとの差別化が図られています。
ただ…重たいんですよね、Cosmo。
重量を量ってみたら680gと、かなり重量級のヘッドフォンです。文鎮級と呼ばれることもある?final D8000でさえ523gなので、さらに150gくらい重たいという…。
さらに、作りがしっかりしている標準ケーブルは100gでしたので、1/2の重量がかかると仮定すると730gとそうとうヘヴィ。
我が家にあるヘッドフォンの重量ですが、
AKG K812:390g
SENNHEISER HD820:360g
HIFIMAN ANANDA:398g
MoonDrop Cosmo:680g
となります。他の3台がすべて300g台なのに対し、堂々の700g弱…。
というか、ガラス採用かつ大柄なボディで重たそうなイメージのあるHD820が最軽量なんですね。
他のヘッドフォンと比べて300g近い重量差がありますので、装着していてもしっかり重量を感じるヘッドフォンです。
重ためのヘッドフォンが苦手な方、肩が凝りやすい方にはお勧めしにくいヘッドフォンでもあります。
重量はありますが、頭に当たるバンド部分が幅広いのと、イヤーパッドが大きめなので装着感は良く、案外自然に装着できます。視聴中にズレたりすることもありません。
ただし、姿勢が悪いとダイレクトに首や肩にダメージが来そうな気がします。
Cosmoと同じ超重量級のヘッドフォンといえば、Audeze LCD-4(660g)やAudeze LCD-XC(677g)といったモデルがありますが、常用する限界に近い重量だと思います。
マグネットで固定されており、簡単に脱着できるイヤーパッド
MoonDropのヘッドフォンですが、イヤーパッドはマグネットで取り付けられており、簡単に外すことが可能です。
PARAのイヤーパッドの評判が高いようですので交換してみるのも面白そう。
他社製品の中にはかなり硬い爪ではまっている製品もありますが、マグネットで簡単に交換できるのは良いですね。
プラグ装着部分。
ここだけ光沢感のある、プラスティッキーな仕上げでモールドの合わせ目も目立つ感じなので、ちょっと安っぽさがあります。
価格を考えると、ここはもう少しデザインを考えてほしかったところかも…。
装着感は良いが、大きめのサイズ感
前述のようにヘッドバンドの幅が広いのと、100mmの大型のイヤーパッドのおかげで装着感はいいのですが、気になったのはヘッドバンドの調整可動域。
私はそこそこ頭が大きいので、ヘッドフォンのサイズ調整が段階式の場合、大抵は最大から1つ下あたりの位置で使うことが多いのですが、Cosmoは下から2番目くらいの位置がちょうど良い感じでした。
ということは、最小にセットしてもかなり大きいような気がしますので、頭が小さい方、女性の方などは装着位置が合いづらいことがありそうです。
ヘッドバンド用のクッションとかもあるので、そういうのを使って調整するのが良さそうです…が、さらに重たくなりそう。
本当は、購入前に実機確認ができれば一番いいんですけどね。
Cosmoのスペックとか
公式サイトの情報だと
- 感度: 100dB/Vrms (@1kHz)
- インピーダンス: 15Ω±15% (@1kHz)
- 再生周波数範囲特性: 13Hz- 58kHz (IEC61094, Free Field)
- 有効周波数範囲特性: 20Hz- 20kHz (IEC60318-4, -3dB)
- ヘッドフォン側ジャック: 3.5mm
- ケーブルプラグ: 4.4mm(6.3mmステレオジャックへの変換ケーブル付属)
- 重量:680g
といった感じです。
重量について触れてないのは、ちょっと重たすぎ…とメーカー側も思ってるからでしょうか。
インピーダンスは15Ωと低め。ANANDAも16Ωですので、薄膜ユニットは低めなのかもしれません。
感度が100dBと高いヘッドフォンなのですが、体感ではそこまで鳴らしやすくない…というか、93dBのAnandaに比べても鳴らしづらい気がします。
駆動力の高いヘッドフォンアンプと組み合わせるのが良さそうに思います。
総評
久々に手持ちのヘッドフォンを聴き比べたところ、コスパで言うとHifiManのANANDAがやっぱり優れているなぁ…と再確認した感じですが、MoonDrop Cosmoでしか得られない世界観がしっかりあるのは確かです。
ほどよいヴォーカルとの距離感、反応の良さと抜けの良い開放型ユニットということもあって、聴いていて疲れない、心地よい音を奏でるヘッドフォンです。
ただ、音は心地よいのですが、重たいので身体にとってはあまり心地よくないかも…というのが最大のデメリット。背筋をシュッと伸ばして体勢を整えれば、重量級のヘッドフォンでも疲れないのですが、猫背だったりするとかなりダメージが来そうではあります。
あと、入手性が悪いのも問題と言えるかと。
Amazonでは商品の登録はありますが、在庫なしとなっています。
時々在庫が復活するのかな…?念のためAmazonのリンクを張っておきます。
使用時間が短い美品がオークションやメルカリでたまに出ていますが、おそらく重たすぎて合わなかった方のような気がしなくもなく…
この点さえクリアできれば、手元に置いておきたいヘッドフォンの1つだと思います。MoonDropの目指す音作りが詰まった、変な癖はないけどきちんとしたキャラクターがある、そんなヘッドフォンな気がします。
購入を考えている方は、国内の中古品は13万前後とかなり高い値段で推移している(そもそも出品自体少ないし、入手性が悪い為か…)ので、個人的にはAliExpressで新品を購入するのがお勧め。
DUOLAHIFI Storeというセラーから購入しましたが、段ボールに緩衝材をしっかり詰めた状態で梱包されており、ダメージもなく購入後6日で届きました。
現時点で134,000円程度ですので、中古を買う金額で新品が購入可能です。
ヘッドフォン側が3.5mm2極モノラルミニなので、いろいろなケーブルが利用出来ます。
ケーブルをどれにするか悩みながら届くまでの間を楽しむのも良いかと思います。
このレビューですが、予想以上にPVが伸びており…皆さんCosmoにかなり興味がある様子…?
手に入りづらい、というのもありそうですが、かなりしっかりした個性を持った良いヘッドフォンですし、日本でも入手しやすくなると良いのですが。
イヤーパッドを交換して遊んでみる
PARA用のイヤーパッド、EP-100Aに交換すると音が良くなる、ということらしいのですが、購入するのがとても難易度が高そうでしたので、汎用品イヤーパッドをいろいろ買って遊んでみました。
MoonDrop Cosmo用に真空管アンプを買ってみた
価格的にも手頃な真空管採用のヘッドフォンアンプがあったので、Cosmo用に買ってみました。
詳しくは下記をご参照ください。
現時点でのベストな組み合わせ
現状のCosmoの組み合わせ。
純銀8本編みケーブルにシルバーのベルベット・イヤーパッドという組み合わせです。
元々中域の豊かさに特徴があるヘッドフォンなので、音のクリアーさや繊細さを考えると純銀ケーブルが似合うように思います。
イヤーパッドは別のもののほうが音質は良いところもありましたが、見た目もシルバーで統一でき、装着感も良好なベルベット素材のものを使っています。
この組み合わせで聞くAimerのカタオモイとか良いですよ。
すぐ近くで手が届きそうなヴォーカルに、近くに感じるものの広さを感じる音場は面白いキャラクターだと思います。
メーカーの世界観、音質、カスタマイズのしやすさ(イヤーパッドは汎用105mm品が使えるし、ヘッドフォン側は3.5mmプラグなのでリケーブルも簡単)も相まって、人気があるのもわかるような気がします。
しかし、正直鳴らしづらいヘッドフォンですね、これ。
所有している他のモデルよりも同じボリュームではっきりとわかるくらい、音が小さいです。
ポータブルアンプでは少々厳しい場面もありそう。
しっかりした出力でドライブ能力が高いアンプと組み合わせて使いたいヘッドフォンです。
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