一昔前、最強のSSDの名を欲しいままにしたOptaneという製品があります。NANDフラッシュではなく3D XPointというメモリを採用したSSDで、性能もぶっちぎりですが価格もぶっちぎりという、極めて尖った製品でした。
約4万円でOptane P4800X 750GB HHHLモデルを購入できましたので、試しにWindowsをインストールしているSamsung 990 PROと交換してみたところ、体感差で十分感じ取れるくらいWindowsが快適に動くようになりましたので、簡単にレビューしてみたいと思います。
Optane P4800Xの強み
Optane P4800Xは2017年に登場したSSDですので、すでに9年近く前の製品となります。一般的に、9年も古ければ性能的には微妙すぎて使えないレベルといっても良いのですが、Optane SSDは未だに第一線で通用するスペックを誇ります。
ある意味、この性能が2017年に登場していた、というのは驚きですね・・・
一般的には、最新のGen4/Gen5 SSDの方が速いと思われがちですが、OSのレスポンス(体感速度)を決定づけるのは、カタログスペックのシーケンシャルリードではありません。OSが動作する際は極めて大量のランダムアクセスが発生します。Optane SSDにWindowsをインストールすると極めて快適なのは、3D XPointテクノロジーによる圧倒的な低レイテンシと、低キュー深度(QD1)におけるランダムアクセス性能がぶっ飛んでいるOptane SSDの強さにあります。
Samsung 990 PROとOptane P4800Xの性能比較
今までCドライブで使用していた、Samsung 990 PROと、Optane P4800Xの主要数値を比較してみたいと思います。
| 項目 | Samsung 990 PRO (2TB) | Intel Optane P4800X (750GB) | 比較のポイント |
| インターフェース | PCIe 4.0 x4 | PCIe 3.0 x4 | 帯域幅は990 PROが圧倒 |
| シーケンシャルリード | 7,450 MB/s | 2,400 MB/s | カタログ上はOptaneの「負け」 |
| ランダムリード (QD1) | 約 22,000 IOPS | 約 150,000 IOPS | ここが体感差の源泉 |
| 読込レイテンシ | 約 80 ~ 100 μs | 約 10 μs 未満 | 応答速度が10倍近く違う |
| 書き換え寿命 (DWPD) | 0.65 (1200TBW) | 30 | 耐久性は比較にならない |
| 販売開始時期 | 2022/12 | 2017/3 | 5年以上の開きがある |
スペック上の数字では、Gen4の990 PROの方がシーケンシャルリードで3倍以上もの差があり速いように見えますが、これは大容量ファイルをコピーする際の「最大瞬間風速」に過ぎません。OSの挙動を左右するのは先ほど説明したようにランダムアクセスであり、表の太字部分です。
なぜOptaneは「機敏」なのか
3D XPoint と NANDフラッシュの違い
Samsung 990 PROを含む一般的なSSDは「NANDフラッシュメモリ」を採用しています。NANDはデータを「ページ」単位で読み書きし、「ブロック」単位で消去する必要があります。この構造上、以下の制約が生まれます。
- ガベージコレクション: データの整理中に遅延が発生する。
- 読み出し遅延: 物理的な制約で、命令を出してからデータが届くまでに数十マイクロ秒(μs)を要する。
一方、Optaneが採用する3D XPointは「ストレージ・クラス・メモリ(SCM)」と呼ばれます。これは「ビット」単位でのアクセスが可能で、DRAMに近い性質を持ちます。
レイテンシ(遅延)が 10μs 以下ということは、OSが「あのデータを読み取れ」と命令してから実行されるまでの空き時間がほぼゼロであることを意味します。
今でも通用するQD1(キュー深度1)の高速性能
Windows 11の日常的な操作(スタートメニューを開く、ブラウザを起動する、レジストリを読み込む)の多くは、単一の命令が連続するQD1(Queue Depth 1)のランダムアクセスです。
990 PROが本領を発揮するのは大量の命令を並列処理するQD32などの高負荷時ですが、デスクトップユースでQD32に達することは稀です。
Optaneは、この「最も頻繁に使われる領域(QD1)」で990 PROの約5〜7倍の速度を叩き出します。
これが、Windows 11を使う上で機敏さを感じる源泉となっています。


左がOptane P4800X、右がSamsung 990 PROのベンチマーク結果です。
シーケンシャルでは負けるものの、ランダム4K Q1T1では圧倒的な性能を誇ります。
Windows 11環境における実質的なメリット
今回Optane P4800Xを搭載したのは、Ryzen 5800XにB550という、ある意味枯れたAM4プラットフォームなのですが、PCIeも4.0までの対応にとどまるため、最先端のSSDを搭載しても性能を100%発揮出来ずに宝の持ち腐れになってしまいます。
それ故SSDも一昔前のものを使っていた訳ですが、このような環境におけるP4800Xへの換装は以下のようなメリットをもたらします。
- システムコールのレスポンス向上
割り込み処理の待ち時間が極小化されるため、Windowsのバックグラウンドで動く無数のサービスやテレメトリ、ウイルススキャンなどが、メインの作業を邪魔しなくなります。 - ブラウジングとキャッシュ処理
数千の小ファイルで構成されるブラウザキャッシュの読み書きがDRAMに近い速度で行われるため、ウェブページの表示が「パッ」と切り替わるようになります。 - プチフリーズの完全消滅
NAND SSDではキャッシュ切れやバックグラウンドの整理で一瞬のラグが生じることがありますが、Optaneには「キャッシュ」という概念そのものが不要なため、常に一定の超高速レスポンスが維持されます。
これらのメリットによって、体感でわかるレベルでWindowsが高速化されます。
なぜ今Optane P4800Xなのか
現在、Intelはクライアント向けOptane事業から撤退していますが、エンタープライズ向けのP4800Xなどは、製品のサポートも切れ、さらに古い製品であることから、かなり手頃な価格で中古市場で見かけます。
ランダム性能に優れたOptane P4800Xは一昔前のSSDと比べるとシーケンシャルでは負けてもランダムQD1ではまだまだ通用するレベルの性能を持ち、しかも書き換え寿命 (DWPD)は比較にならないレベルです。
かなりニッチなSSDなので万人にお勧めできるものではないのですが、古めの構成のPCで、とにかく快適なSSDを探しているような場合には、選択肢の1つにしても良いと思います。
あと、なんといってもエンタープライズ向けのOptane SSDがPCに入っているという満足感があります。(マニアック)
- HHHLを選ぶべし
Optane P4800Xには、HHHLとU.2という2通りのモデルがありますが、PCIeスロットに直接刺せるHHHLがお勧めです。大型ヒートシンクを搭載していますので、安定した動作が期待できます。 - 書き換え耐久性の安心感
30 DWPD(1日に全容量を30回書き換えても5年間耐える)というスペックは、個人利用では「一生使い切れない」レベルの耐久性です。OSドライブとしての信頼性は、コンシューマー向け製品とは次元が違います。
Intel VMD環境だと認識しないっぽい
当初、業務用PCのテンポラリドライブとして使用する予定だったのですが、Z890マザーボードに取りつけたところ、認識されない状態でした。
どうやらVMDを有効にしていることが原因のようなのですが、VMDを無効にするのはかなり面倒(下手するとOSが起動しなくなる)のでやりたくないため、VMD無効状態での動作検証は行っていません。
VMDを有効にしている環境で使用したい方は、動かない可能性もあるので注意してください。
※VMDで認識しない訳ではなく、私の環境の場合、M.2スロットに装着したSSDがPCIeレーンを使用していたため、認識できないだけでした…。
結論
Samsung 990 PROは、PCIe 4.0世代のNAND SSDにおける最高傑作の一つです。しかし、Optane P4800Xはストレージの物理的な限界を超越した、まったく別カテゴリーのデバイスと言えます。
Optane P4800Xは発熱も多く、PCIeスロットを消費する上、容量も750GBと今時のSSDとしては物足りないサイズです。(一応1.5TBのモデルもあるがほぼ見かけない)
万人にお勧めできるSSDではないのですが、PCIe 4.0世代のPCで使う分には、まだまだ最前線で戦えるだけのスペックを備えています。
特にエンタープライズ向けの浪漫デバイスが好きな方にはおすすめなSSDと言えるかと思います。
P4800Xが思ったよりも良かったので、調子に乗って最上級モデル、Optane DC SSD P5800Xを購入してしまいました…



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