Fractal Designのケースを気に入っており、我が家にあるものだけでも、Torrent Compact、Mood、Terraと3製品あるのですが、今回はLLMサーバー用に、前から気になっていたNorthを購入してみました。
各製品のレビューは以下をご確認ください。



Northに限らず、Fractal Designのケースについては人気があることもあり、良いレビューがたくさんありますので、ここでは全体については語らず、今回LLMサーバーを組んで解ったことのみ簡単にまとめてみたいと思います。
今回構築したLLMサーバーについて

nvidiaのTesla V100 SXM2 32GBを3基搭載した、VRAM 96GBのLLM用サーバーとなります。
電源は1200W、CPUはintel Core i9 7920X、マザーボードはASUS ROG Rampage VI Extremeという構成です。
詳細については以下のレビューをご参照ください。

写真を見てわかるように、かなりギッチギチに詰まったPCとなりました。
NorthでPCを組むときの注意点
結論から言うと、Fractal Designらしく、窮屈で余裕がなく、大量のパーツを組み込むには使いづらいケースですが、無駄のない端正なデザインこそFractal Designの美点であり、デメリットでもあります。
そんなFractal Designらしさが詰まったケースです。
組みやすさを求める方は、間違いなくNorth XLをお勧めします。今回Northを購入したのは、このデザインはやはり標準サイズのNorthが最高と思ったからで、組みづらさなどは二の次です。
Fractal Designらしい心遣い
ちょっとしたことですが、よく考えられているPCケースだと思います。

例えば、マザーボードのIOシールドパネル上部にある、ケーブルを引っかける爪。背面にケースファンを取りつけた場合に気になる配線を引っかけることで、マザーボード側にケーブルが垂れてくることを回避できます。
ファンのケーブルは適当な隙間に詰め込んで見えないように処理してしまえば良いのですが、ケースファンの配線を裏側に逃がすための経路がきちんと用意されています。ここに「爪を付けよう」ってなかなか考えないと思います。そんなところがFractal Designっぽいように感じます。

また、電源ユニットを取りつけるバックプレートも、横から見ると少し歪んでいます。単に加工の際の反りかもしれませんが、中央が盛り上がっているのは、ネジ止めしてフラットになることで、バックプレートの隅が浮き上がらないようになっています。安いケースだと、パネルをネジ止めすると周囲に微妙な隙間が出来ることもあります。
組み立てたときにピタッと収まる。そんなところもFractal Designのこだわりのように思います。
やはり狭い。Fractal Designらしいギリギリ設計
そして、やはり狭いです。ギリギリまで絞り込んでいるからこそ成り立つプロポーションであるのはFractal DesignのPCケースに共通するメリットでもあり、同時にデメリットでもあります。

裏配線スペースは2段階の深さになっており、浅い方は15.5mmしかありません。
ATX電源のケーブルは束ねられたものだと15mm近い場合もあり、他のケーブルとクロスすると15mmを超えてしまい裏蓋がきちんとはまらない、強引にはめ込むと歪んでしまう可能性があります。
裏配線スペースが狭いのはFractal Design共通の特徴ですので、ケーブルマネジメントはきちんと考える必要があります。

フロント側は一段深くなっており、26mmのスペースが確保されています。
これくらいあればケーブルがクロスしても問題はありません。太いケーブルはなるべくフロント側に持ってきて配線するのが良いのですが、それだと長さが足りなくなる場合もありますので、必要に応じて延長ケーブルなどを利用すると組みやすいかと思います。

ケース背面に取りつけ可能なファンは12cmまで。最近のPCケースでは一般的な14cmファンは取付できません。このことからも、いかにNorthがスリムなケースであるかが解るかと思います。
バックプレート付きのE-ATXケースを利用する場合の注意点
そもそも、NorthはE-ATXは対象外ですが、制限付きですが利用可能です。
今回組み込んだマザーボードは、E-ATXサイズのASUS ROG Rampage VI Extremeです。このマザーボードはボードの裏側にバックパネルが取りつけられており、隙間にRGBエフェクト用のLEDが埋め込まれています。

Northのケーブルホールに取りつけられているこのゴムパーツですが、バックパネル付きのE-ATXサイズのマザーボードを取りつけるとゴムパーツと干渉します。そのままネジ止めするとマザーボードがかなり曲がって反るので危険です。

上の写真で、バックパネルのLEDとケースがほぼ接触しているのが解るでしょうか。ゴムパーツを付けた状態だと、3mm程度厚みがありますので、その部分がマザーボードと干渉してしまいます。
また、横向きになっているコネクタは曲げやすいフラットケーブルを使うか、下方向に曲がったL字コネクタを使わないと、ケースの段差と干渉して利用できないと思われます。
もっとも、NorthはATXサイズまでの対応となるので、E-ATXを使う場合は自己責任となります。E-ATXを使うのであればNorth XLを素直に選ぶのが良いと思います。
360mmラジエーターを使う場合はビデオカード長300mmまで
フロントに360mmのラジエーターを取りつける場合、利用可能なビデオカードは長さ300mmまでの制限となります。
今回取りつけたビデオカードは、RTX4090のクーラーを利用したTesla V100ですが、このクーラーは336.9mmの長さなので37mm不足します。
このラジエーター取付時の300mm制限はかなり厳しめに見た数値で、実際にはもう少し余裕があります。25mm厚のラジエーターであれば、今回取りつけたGPUだと15mm程度の不足でしたので、実際には320mm程度のGPUも取りつけ可能だと思います。
ただし、ラジエーターの厚さは製品によって異なりますので、どのようなラジエーターであっても安全に取りつけ可能なビデオカード長は300mm、ということだと思います。

今回は、ラジエーターとファンの取付順序を逆にし、ケースフロント側にラジエーターを配置、内側にファンを取りつけました。GPUと干渉する部分にはスリムファンを利用することで、360mmラジエーターを利用しつつ、336.9mmのGPUを取りつけることができました。
ただし、この方法はケースの改造が必須となります。詳しくは後ほど説明します。
フロントファンを取り外す際はショートドライバーがあると便利

2つのフロントファンはケース内側からネジ止めされているのですが、マザーボードを組み込んだ状態で外そうとするとドライバーが入りません。
狭いスペースでも作業できる、ショートドライバーを買っておくと便利です。
長尺電源を使う場合の注意点

今回組み込んだ電源は、200mmのCorsair HX1200iとなります。
Northの下面にある電源ユニット用の吸気口は、一般的な電源ユニットサイズ用に設計されており、長尺電源だとファンの1/4程度が隠れてしまいます。
実際には問題無いレベルだと思いますが、ちょっと気になるところではあります。
ケース自体は一般的な構造
TerraやMoodのように凝ったギミックはなく、一般的な、とてもわかりやすいケースです。使われている鉄板もそこまで分厚い訳ではなく、これも一般的なケースと同じ。剛性は十分ですが分厚い鉄板を使ったガッチリしたケースではありません。
スタンダードなPCケースですので、自作PCを組んだ経験がある方であれば、迷うことなく組めると思います。
フロントにラジエーターを配置しつつ長尺GPUを使う方法
メーカーサイトには、360mmラジエーターを使う場合はビデオカード長300mmまで、という記載がありますが、これは正確ではなく、フロントに240/280mmラジエーターを取りつける場合も同様に300mmまでのカードしか利用できません。(実際にはもう少し余裕があるのは前述の通り)
では、なぜ360mmに限定しているかというと、240/280mmのラジエーターであれば天板に取りつけられるため、となります。
ただし、ケース内で暖められたエアーを利用することになるのと、トップパネルも細かいメッシュでエアフローが期待できないNorthですから、出来ればフロントから吸気するエアーを使ってラジエーターを冷やしたいところです。
そこでおすすめなのが、通常はフロントの外側にファン、内側にラジエーターという順序で取りつけるところを、逆にして外側にラジエーター、内側にファンを取りつけること。
内側にファンを配置することで、薄型ファンを使えば+10mm程度のスペースが稼げますので、今回利用した336.9mmのGPUも取りつけ可能です。
一見これで問題解決、というように見えますが、問題は360mmのラジエーター。ラジエーターにはリザーバータンクの役割を持つ部分が取りつけられており、今回利用したラジエーターは長さが395mmもあります。
Northのフロント側の開口部は上下370mmしかなく、物理的にラジエーターが収まりません。


ではどうするかというと、ケースを切断してしまいます。
ディスクグラインダーを使って切断、ヤスリがけして、切断部を黒く着色すれば完成です。
誤って手前に飛び出している部分を切断しないようにだけ注意してください。(やってしまったので補修した)
あと、ディスクグラインダーを使う場合は必ず目を保護するためのゴーグルを着用してください。切断砥石が割れて目に当たると最悪失明します。

フロント下部を切断、360mmラジエーターを取りつけたNorth。フロントグリルを外すとかなりインパクトがあります。
Fractal Designらしさ満載の優秀なケース
極めて「普通」なPCケースを、Fractal Designが全力でデザインした、そんなケースです。木材を組み合わせたフロントグリルは今でも印象的で、似た製品が複数登場する中、やはりFractal DesignのNorthの端正さ、完成度は際立っています。
普通のPCケースですので、実売価格もそれほど高くないのが良いところです。一回り大きなXLは1万円ほど高くなりますが、今回購入したFractal Design North Charcoal Black TG DarkはAmazonで24,000円弱でしたので、割と買いやすい価格帯のケースだと思います。

Fractal Designらしいこだわりを感じるフロントパネル。
横一直線に並ぶ、ゴールドで統一されたボタン・ジャック類。右端に配置されたPower LEDは側面から照射することでグラデーションとなってUSBコネクタに向かって消えていきます。
こういった演出が光るのが、Fractal Designのセンスの良さだと思います。
E-ATXサイズのマザーボード、360mmラジエーター採用のV100 Dualカード、336.9mmのGPU、合計3枚のGPU…いずれもNorthに組み込むには適さないパーツばかりですが、ケースの加工も含めて試行錯誤しながら組み上げるのは、自作PCならではの楽しさであるとも思います。
久々に、組み立てるのに難儀したPCですが、完成した喜びもひとしおでした。
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