以前レビューしたFractal Design Terraですが、コンパクトな筐体ながら3スロット占有のRTX 3090を搭載できる、非常によくできたPCケースです。
ただし、コンパクトな筐体ゆえにCPUクーラーの高さに厳しい制約があり、冷却性能についてはある程度妥協しなければなりません。
当初、このPCにはintel Core i3 14100Fを搭載していましたが、CPUに負荷のかかる処理が増えてきたので、Core i5-13400に載せ替えました。CPUクーラーには高さ36mmという非常にコンパクトなThermalright AXP90-X36を使用していましたが、CPUをフルロードで動作させると温度が90℃近くまで上昇してしまいます。
Core i5-13400のTjunction Maxは100℃なので、90℃という温度が直ちに問題になるわけではありませんが、数時間にわたってこの温度で動作し続けるというのは、あまり気持ちの良いものではありません。
そこで、Terraに搭載できそうなCPUクーラーを探したところ、見つけたのがID-COOLINGの「IS-55 BLACK」です。高さ55mmとAXP90-X36より19mmも背が高くなりますが、その分ヒートシンクが大きくなり、さらに搭載しているファンも120mmと大型化していますので、冷却性能の向上が期待できます。
交換した効果は非常に大きく、最高CPU温度が約10℃、通常使用程度の負荷では15~20℃程度と大幅に低下しました。さらに、ファンの大型化に伴いCPUの隣にあるM.2 SSDも10℃近く温度が下がるという、嬉しい副次的な効果もありました。
ID-COOLING IS-55 BLACKの仕様
IS-55 BLACKは、コンパクトなPC向けのロープロファイルCPUクーラーです。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| メーカー | ID-COOLING |
| 製品名 | IS-55 BLACK |
| サイズ | 120 × 120 × 55mm |
| 冷却方式 | トップフロー型空冷 |
| ヒートパイプ | 6mm径 × 5本 |
| ファン | 120 × 120 × 15mm |
| ファン回転数 | 500~2,000rpm |
| ファン制御 | PWM 4ピン |
| 対応ソケット | Intel LGA1700など、AMD AM4/AM5など |
特徴的なのは、55mmという高さでありながら、120mmの大型ファンと5本のヒートパイプを備えていることです。
一般的なサイドフロー型の大型CPUクーラーとは比べられませんが、Terraのように高さ制限の厳しいPCケースでは、こうしたロープロファイル型の製品が重要になります。
また、トップフロー型なので、CPUだけではなくメモリやVRM、SSDなどCPU周辺のパーツにも風が当たるというメリットがあります。
今回の交換では、この点が非常に有効に働きました。
AXP90-X36から交換。ヒートシンクの大型化による冷却性能向上に期待
これまで使用していたThermalright AXP90-X36は、高さ36mmという非常に薄いCPUクーラーです。これだけコンパクトでありながら、10コア16スレッドのCore i5-13400をフルロードで動作させても90℃程度に収まっていたのですから、かなり優秀な製品だと思います。
ただし、CPUの負荷が高い状態が長時間続く用途では、もう少し温度を下げたいところです。
今回購入したIS-55 BLACKは、高さが36mmから55mmへと19mm増加します。
数字だけ見ると19mmの差ですが、ロープロファイルクーラーとしてはかなり大きな違いです。CPUと接するプレートおよびヒートパイプの厚みもありますので、ヒートシンク部分に限って言えば、倍くらいの違いがあります。
ヒートシンク自体のサイズに余裕が生まれ、さらに120mmファンを搭載しているため、より広い範囲に風を送ることができます。

当然ながらクーラーが大型化すれば、その分だけ周辺パーツとの干渉が問題になります。
特にTerraは、ビデオカード側とCPU側のスペースを可変式のマザーボードプレートで配分する構造ですので、ビデオカードが大型になるほどCPUクーラーに使えるスペースが減少します。
今回は3スロット占有のRTX 3090を搭載していますので、CPUクーラー側のスペースはかなり厳しい条件になります。
背の高いメモリは干渉するため、取り付け方向に工夫が必要
IS-55 BLACKを取り付ける際に注意したいのが、メモリとの干渉です。
本製品は、ヒートシンクがメモリ側に張り出す向きで取り付けた場合、メモリの高さが33mmを超えると干渉する可能性があります。

ヒートシンクはメモリと干渉しないように一部が切り取られた形になっています。一般的な背の低いメモリであれば問題になりにくいのですが、今回使用しているメモリはG.SKILLのTrident Zシリーズ。大型のヒートスプレッダを備えており、高さが40mmを超えるため、そのままではヒートシンクと干渉してしまいます。
そこで今回は、メモリ側ではなく、M.2 SSD側にヒートシンクとファンが張り出す向きで取り付けることにしました。
この向きであれば、背の高いTrident Zとの干渉を回避できます。

もちろん、マザーボードのレイアウトによっては、今度はVRMヒートシンクやI/O周辺のパーツに干渉する可能性がありますので、事前に確認する必要があります。
今回の構成では無事に取り付けることができました。
120mmファンのおかげでSSD温度まで約10℃低下
取り付け方向を変更したことで、思わぬメリットもありました。
IS-55 BLACKの120mmファンがM.2 SSDの上に張り出す形になったため、CPUだけではなくSSDにも冷却風が当たるようになったのです。
Terraのようなコンパクトなケースでは、ケース内部の空気の流れを確保することが難しく、特にM.2 SSDは周辺の熱がこもりやすくなります。今回、CPUクーラーを交換した結果、SSDの温度が従来より10℃近く低下しました。
CPUを冷却するために購入した製品ですが、SSDの冷却性能まで改善したのは嬉しい誤算です。120mmファンを搭載するトップフロー型CPUクーラーならではのメリットだと思います。
もちろん、SSDの配置によって冷却効果は異なりますが、Mini-ITXマザーボードのようにCPU周辺にパーツが密集する構成では、CPU以外のパーツもまとめて冷却できるという点は大きな魅力です。
CPU温度は最大約10℃、通常負荷では15~20℃低下
肝心のCPU冷却性能ですが、こちらも期待どおりの結果となりました。
AXP90-X36からIS-55 BLACKに交換したところ、CPU温度は以下のように改善しました。
| 比較項目 | IS-55への交換効果 |
|---|---|
| CPU最高温度 | 約10℃低下 |
| 通常使用程度の負荷 | 約15~20℃低下 |
| M.2 SSD温度 | 約10℃低下 |
従来はCPUをフルロードにすると90℃近くまで上昇していましたが、IS-55 BLACKへの交換後は約10℃低下し、80℃前後に収まるようになりました。

また、通常使用程度の負荷では15~20℃程度の温度低下が確認できました。
1点ご注意いただきたいのは、ファン回転数はマザーボードのAUTO設定にしているため、同一回転数での比較ではありません。厳密にはクーラー単体の性能差だけでなく、ファンの回転数や制御特性なども含めた、実際の使用環境における比較となります。
それを踏まえても、これだけ温度が下がったというのは十分満足できる結果です。
やはりヒートシンクの大型化は冷却性能に大きく影響するようです。
もっとも、AXP90-X36も高さ36mmという小ささで、Core i5-13400のフルロードに耐えられていたことを考えれば、非常に優秀な製品だと思います。
今回は取り付けスペースに余裕ができたことで、より大きなクーラーに交換した効果がはっきりと現れました。
Fractal Design Terraと3スロットRTX 3090の組み合わせでも取り付け可能
今回もっとも心配だったのが、TerraにIS-55 BLACKを収められるかという点でした。使用しているビデオカードは、玄人志向のGG-RTX3090-E24GB/TPです。3スロットを占有する大型のRTX 3090なので、CPUクーラー側にはそれほど余裕がありません。
Terraは内部のマザーボードプレートの位置を変更することで、GPU側とCPU側の空間を調整できる構造となっています。今回はかなりギリギリではありますが、IS-55 BLACKと3スロット占有のRTX 3090を問題なく取り付けることができました。

実際に組み込んでみると、CPUクーラーとサイドパネルとの間に大きな余裕はなく、数ミリ程度とかなりギリギリです。ただ、ケースの内部空間をかなり有効に使えているという意味では、なかなか良い組み合わせになったと思います。
当然ながら、ビデオカードの厚みやCPUクーラーの取り付け方向、マザーボードの構造などによって取り付け可能な組み合わせは変わります。
今回の環境では問題なく取り付けられましたが、すべての3スロット占有ビデオカードと組み合わせられるわけではない点にはご注意ください。
特にTerraでは、CPUクーラーとサイドパネルとの距離が近すぎると、吸気音が大きくなる場合もありますので、できればファンとサイドパネルの間に多少の隙間を確保したいところです。
Fractal Design Terraで冷却性能を重視するならおすすめ
今回、AXP90-X36からIS-55 BLACKに交換しましたが、結果としては大満足です。
最高CPU温度は約10℃、通常使用程度の負荷では15~20℃程度下がり、さらにSSDの温度まで10℃近く低下しました。
Terraのような小型ケースでは、CPUクーラーを大型化することが難しいだけに、この温度低下は非常に大きなメリットです。
特に気に入ったのは、120mmの大型ファンによってCPU周辺のパーツまで冷却できる点です。
一方で、ヒートシンクがメモリやマザーボード周辺のパーツに干渉する可能性がありますので、取り付け方向やメモリの高さについては事前の確認が必要です。
今回のようにTrident Zなど背の高いメモリを使用している場合でも、取り付け方向を工夫することで対応できる場合があります。
また、3スロット占有のRTX 3090との組み合わせでも、かなりギリギリながら搭載できました。
Terraに搭載するCPUクーラーは高さの制約から選択肢が限られますが、可能な範囲で少しでも冷却性能を高めたいという場合には、IS-55 BLACKは非常に魅力的な製品だと思います。
Fractal Design Terraを使っていてCPUの冷却性能に不満があるのであれば、ぜひ検討したいCPUクーラーです。
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