PINの入力が面倒という理由で、仕事用PCのサインインにCiscoのWindows Hello顔認証対応ウェブカメラを使用していました。4桁の数字を利用するPINを使えば、パスワードそのものを毎回打つわけではないので大した手間ではない、と思いがちですが、席を外すたびに数分で自動ロックされ、戻ってきて数字を打ち込む、という動作を1日に数回~十数回も繰り返していると、それなりに面倒です。
先日、Ciscoのウェブカメラが顔認証データの作成が出来ないという問題にはまり、解決までに時間がかかりそうだったため、指紋認証で急場をしのぐことにしました。卓上に置けるタイプの指紋認証リーダーとして、サンワダイレクトの400-FPRD3を購入してみました。
使ってみた結論
メリット
- 卓上に置ける独立したユニットなので、キーボードの横など「一番指が届きやすい場所」に設置できる
- 360度認証で、指の向きを気にする必要がない。なぞる動作も不要で、指を載せるだけで認証が通る
- 認証が通った瞬間にサインインが完了する。顔認証のように、そこからOKをクリックするという、もう一操作を挟む必要がない
- MoC(Match on Chip)方式で、指紋の照合がデバイス内で完結する
- ドライバのインストールは不要。挿してWindows Helloで指紋を登録すれば終わり
- 指紋は10件まで登録できるので、両手の指を複数登録しておける
デメリット
- USBポートに挿しっぱなしにするドングル型と比べると、価格は2~3倍前後になる
- ケーブル長は1.5m。PC本体が机の下の奥まった場所にある場合、取り回しを考えるorUSB-Cの長めのケーブルが必要
- 対応OSはWindows 11・10のみ。MacやLinuxでは使えない
- 静電容量式なので、指が極端に乾燥していたり、濡れていたりすると認識率は落ちる
PIN入力と顔認証、それぞれの惜しいところ
PINは短くても「キーボードを打つ」という動作が残る
Windows HelloのPINは、そのPCでしか使えない4桁以上の数字ですので、パスワードをそのまま打つよりは安全ですし、入力自体も短時間で終わります。
ただ、キーボードに手を戻して数字を打ち、Enterを押す、という一連の動作は残ります。また、オフィスなどの共有の場所で運用する場合は入力しているところを見られる可能性は常にありますので、桁数を増やすと今度は入力そのものが面倒になる、というジレンマもあります。
顔認証は速いが、認証後に一手間かかることがある
Windows Helloの顔認証は、画面の前に座るだけでカメラが顔を認識してくれますのでかなり快適です。
ただし、一つだけ手間だと思うのは、顔認証が完了したあとに「OK」ボタンをクリックする必要があること。せっかく「何もしなくても認証が終わる」のが顔認証の売りなのに、結局最後に手を動かすことになります。

上は顔認識に成功したあとに表示される画面。OKボタンをクリックする必要があるのが地味に面倒です。
加えて、顔認証は環境の影響を受けやすいという弱点もあります。暗い部屋、逆光、マスク、あるいは姿勢を崩して座っているときなど、認識してくれない状況がそれなりにあります。
その点、指紋認証は指を載せた時点で本人確認が完了しますので、一発で認証が通ります。この「OKを押さなくていい」という差は、文字にすると些細ですが、1日に十数回も繰り返す動作としては地味に効いてきます。
USBドングル型は安いが、置き場所と指の角度で損をする
指紋認証リーダーには、USBメモリのように本体へ直接挿し込む、小型のドングル型もあります。価格は3,000円前後からありますので、コストだけを見ればこちらが有利です。
ただ、ドングル型には構造上避けられない問題がいくつかあります。
手が届く場所に設置できない
ノートPCであれば側面のUSBポートに挿せば済む話ですが、デスクトップPCの場合はそうもいきません。背面ポートは論外ですし、前面ポートに挿したとしても、机の下に置いたPCの前面まで毎回手を伸ばすことになります。USB延長ケーブルを使って手元に持ってくることも可能ですが、固定する方法が面倒ですし、見た目もスマートではありません。
指の角度が固定される
ドングル型は挿し込む向きでセンサーの向きが決まってしまいますので、指を当てる角度も自動的に決まります。ポートの向きによっては、手首をひねって不自然な角度で指を当てることになります。
なぞる(スワイプ)タイプは失敗しやすい
安価な製品にはセンサー上を指でなぞるスワイプ式のものがありますが、これは指を動かす速度と角度が認証精度に直結します。慣れれば通るようになるものの、慣れる必要がある時点でストレスです。
「安くて小さい」というドングル型のメリットは確かに魅力的なのですが、指紋認証は毎日十数回も使う機能ですので、1回あたりの引っかかりが積み重なると、結局使わなくなってしまいます。
サンワダイレクト 400-FPRD3 のスペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 認証方式 | 静電容量式タッチセンサー |
| セキュリティ方式 | MoC(Match on Chip) |
| 認証角度 | 360度 |
| 認証速度 | 50ms |
| 指紋登録件数 | 最大10件 |
| インターフェース | USB Type-A(本体側はUSB Type-C) |
| ケーブル長 | 1.5m |
| サイズ | W37×D41×H20.5mm |
| 重量 | 約32g |
| 対応OS | Windows 11・10 |
| 価格 | 約1万円弱 |
卓上に置けるサイズ
本体は37×41mm、高さ20.5mmと、名刺の4分の1ほどの面積しかありません。重量も32gですので、机の上に置いても存在感はほとんどありません。
重要なのは、これが「独立したユニットである」という点です。PC本体がどこにあろうと関係なく、キーボードの奥でもマウスの手前でも、自分が一番指を伸ばしやすい位置に置けます。ケーブルは1.5mありますので、PCを机の下に設置していても大抵は届きます。
ケーブルの長さが足りない場合でも、USB-Cケーブルが脱着可能なので、長めのケーブルに交換すればOKです。

軽い分、片手で操作すると本体が動くのではないかと思っていましたが、指を載せるだけの動作ですので、押し込む力がほとんど要らず、実用上は問題ありませんでした。
ただ、ガラスマウスパッドの上に置くとやはり滑るので、裏に両面テープを貼り付けて固定することにしました。
360度認証で指の角度を気にしなくていい
この製品を選んだ最大の理由がこれです。なぞる必要がなく、センサーに指を載せるだけで認証されます。しかも認証角度は360度ですので、指がどちらを向いていても構いません。
これが効いてくるのは、キーボードから手を離した「ついで」に認証するときです。角度が決まっている製品だと、正しい向きに指を持っていくという意識が必要になりますが、360度認証であれば、視線を落とさずに指を伸ばして触るだけで済みます。
セットアップはつなぐだけ
USBポートに接続すると、ドライバは自動でインストールされます。あとはWindowsの設定から「アカウント」→「サインイン オプション」と進み、「指紋認識(Windows Hello)」を選んで指紋を登録するだけです。
指紋認識に、デバイスが見つかりません、といったメッセージが出る場合はPCを再起動すればセットアップできるようになります。
なお、指紋を登録するにはPINの設定が先に必要です。PINが未設定の場合は、先にPINを作成してから指紋の登録に進みます。指紋認証が使えない状況に備えたバックアップとしてPINが必要になる、という位置づけですので、これは省略できません。
登録できる指紋は最大10件です。両手の人差し指と中指を登録しておけば、マウスを持っている側の手でも、キーボードに置いている側の手でも認証できます。どちらの手が空いているか分からない状況では、この余裕がありがたいところです。
MoC方式で指紋データがデバイス内で完結する
400-FPRD3はMoC(Match on Chip)方式を採用しています。これは指紋の照合処理をリーダー内部のチップで完結させ、指紋データそのものをPC側に渡さない仕組みです。
PC側へ流れるのは「照合の結果」だけですので、PCがマルウェアに感染したとしても、そこから生の指紋データが抜き取られるリスクは大幅に下がります。指紋は変更できない情報ですので、パスワードのように「漏れたら変えればいい」という話にはなりません。生体情報を扱う機器としては、この方式であるかどうかは価格差以上に重要な部分だと思います。
毎日十数回の「地味な手間」を消す道具
指紋認証リーダーは、それ自体で何かができるようになる製品ではありません。PIN入力でも顔認証でも、最終的にサインインできるという結果は同じです。
それでも400-FPRD3を導入した価値は十分にありました。指を載せるだけで、なぞる必要も、角度を合わせる必要も、認証後に何かをクリックする必要もなく、そのままデスクトップまで進みます。認識速度もとても速く、指を載せたら即認証完了となります。
1回あたり数秒の差ですが、1日に何十回も繰り返す動作ですので、体感の差はかなり大きいです。
ドングル型より価格は高くなりますが、卓上に自由に置けること、360度認証で指の角度を問わないこと、そしてMoC方式で指紋データがデバイス内に留まること。この3点を考えれば、納得できる価格差だと思います。デスクトップPCでWindows Helloを使いたい方には、こちらのタイプをお勧めします。
ちなみに、400-FPRD3とOEM元が同じと思われる製品が3,000円ほど安く売られているようです。
こちらは指紋認証ユニット本体は400-FPRD3と同じと思われますが、USBケーブルが直出しになっているので、ケーブルが交換できないというデメリットがあります。
また、400-FPRD3の方が国内メーカーが販売しているのでサポート的にも有利かと思います。
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